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歴史的産廃事件から自動車リサイクルの今後を考える

自動車リサイクルの今後を考える リサイクルという観点から見た時に、自動車は非常に優秀なリサイクル資源であると同時にとても難しい産業廃棄物という二面性を持っています。
何万品というパーツから形成される自動車はリサイクルの宝庫であり、車体の約9割以上はリサイクル出来る部品や、再生可能な素材があるため、 もはや設計の段階から、ゆくゆくはリサイクルされることを想定されて作られているといっても過言ではないほどです。

その一方で、再利用をするにはコストが高すぎて困難なシュレッダーダストやフロンガスといった環境に有害な廃棄物を含み、 その処理を誤ると私達の地球の未来に悪影響をおよぼす可能性を秘めています。 今でこそ、その適正な処理の徹底が浸透してきたものの、ここまでに至るまでには様々な問題を経験してきました。

その中で、昨今のリサイクル事情を支えている自動車リサイクル法の制定のきっかけにもなったと言われている歴史的な ある「事件」を振り返ると同時に、今後の自動車リサイクルについて今一度考えていきたいと思います。

それは、後に「豊島(てしま)産廃事件」と呼ばれる、 ある悪徳業者による産業廃棄物の不法投棄が発覚したことから始まった公害事件。 事件の舞台となったのは四国の香川県、豊島(てしま)という小豆島の隣にある島でした。
豊島は瀬戸内海国立公園の中にあり、人口は1,000人程度の小さな島です。瀬戸内海の豊かな自然に囲まれて、漁業はもちろん、 野菜や果物の栽培も盛んな島で、福祉施設の建設に力を入れているという点から「福祉の島」とも呼ばれ親しまれています。

豊島事件はそんな平和な島にはあまりにも衝撃的な出来事で、日本中を巻き込んだ大きな社会問題となり、今でもその傷跡が残っています。 事件を引き起こした悪徳業者は、1975年から“食用ミミズの養殖場”と偽った施設の中で、1990年に兵庫県警に摘発されるまで16年にも渡って、 90万トンを超える自動車の破砕クズなどの産業廃棄物を不法に放置したり、 野焼きにし続けていた結果、ダイオキシンなどの有害物質が海に流れ出し、風評被害によって島の漁業に大きな打撃を与えた だけでなく、島で暮らす人々の喘息の発症率が跳ね上がるという住民の健康面にも多大な被害を被りました。

産業廃棄物の不法投棄 そして、2000年に公害調停という形で表面的には事件が解決したように見えますが、未だ多くの産業廃棄物が残ったままで、 2013年の現在でも処理の為に掘り起こされた産廃は、隣の直島に運ばれて溶融処理が続けられているのです。 その処理費用は概算で280億円を越えており大半が税金で賄わされています。
この事件が大きな社会問題となったので、廃自動車の破砕クズ(シュレッダーダスト)を処理する経費負担を自動車リサイクル券によって、 自動車の使用者に負担してもらう為の法律である、自動車リサイクル法制定の運びとつながったのです。

あらためてこの事件を振り返ると、どうしても、“起きるべきして起きた”事件のように思えてなりません。 バブル景気のまっただ中にいた日本は、自動車に限らず、物を大量に生産して大量に消費する。そしてそれを大量に廃棄するという社会全体の風潮があり、 経済を効率的にまわすことばかりに気をとられて本当に見なければいけないこと、考えなければいけないことを見過ごす、 あるいは見て見ぬふりをしてきた結果の現れのように思えるのです。 そしてこれは、現在の私達の生活にも置き換えられるのではないでしょうか。

それはほんの小さなこと、 例えば、家の中の掃除をすると様々なゴミが出ます。 私達はそれを所定の“ゴミ捨て場”に持っていけば家の中のゴミは無くなって綺麗になります。 しかし、これはゴミが自分の視界から見えなくなっただけで、本当に無くなったわけではないのです。

当時、人口1,000人の島に一体何台の自動車が走っていたでしょう。 そこに破砕クズとしてのシュレッダーダストを捨てる由来になった自動車を乗っていたのは大半が別の都会に住む人間です。 確かに、一番の悪は金儲けのために不法投棄をし続けた業者です。でも後先を考えずに物を捨ててしまう、 消費者である私達に全く責任がなかったのでしょうか。一人ひとりがゴミの適正な処分を考えないでいいのでしょうか。

もちろん、自動車において実際にそれができるのは、専門的な知識と認可を受けた処分業者だけです。 しかし、残念ながら現在も不法投棄をする人間はゼロではなく、悪い考えをもった業者も存在します。 ですから、皆さんにできることは自動車を廃車にした後のことも考えて、正しいリサイクルルートを持つ業者を選ぶことです。 廃車の業者選びミスター廃車マンは、一台でも不法投棄される車が減ることを祈っています。

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