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溶接方法と、その技術について

こんにちは。横浜国立大学フォーミュラプロジェクト(YNFP)です。今回は、自動車の製作には欠かせない『溶接』について、お話しします。

溶接して制作された、パイプフレーム
<溶接して制作された、パイプフレーム>

学生フォーミュラでは、大学生自らが1台のマシンの設計・製作を行います。入部するまでは、工作機械の名前も知らなかったような学生たちが、“旋盤”・“フライス盤”・“ボール盤”などを駆使して、部品の製作を行うこととなります。

その製作の中には、当然“溶接作業”も含まれています。特に車体であるフレームは、年度ごとに新規製作することがレギュレーションで定められているため、溶接のクオリティは車両製作の中でも重要になってきます。

そこで、2年間に渡って車両の溶接部品の製作を行ってきた私が、溶接方法の種類とYNFPの溶接部品のご紹介を致します。

〇『溶接方法の種類』

簡単に言えば、溶接とは2つの材料を溶かしてくっつけることです。そして一口に溶接と言っても、実は様々な種類があります。全てを紹介すると日が暮れてしまいますので、今回は弊チームで行っているものも含めて、私自身も経験したことがある代表的なものについてお話します。

①『被覆アーク溶接』

溶接と言われたら、溶接面を被りながら、派手に火花を飛び散らせて作業をしている様子を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?そんな想像通りの作業風景になるのが、この“被覆アーク溶接”です。アーク溶接の中で、もっとも一般的な溶接方法になります。

被覆材を塗布した溶接棒と、母材(被溶接物)の間に発生したアーク(*1)の熱で、溶接を行います。このとき被覆材から、シールドガス(*2)が発生することでアークを保護しています。ホルダに嵌めた溶接棒を手に持って溶接する作業の様子から、一般に“手溶接”や“手棒溶接”と呼ばれることもあります。

必要な機材の構造は簡単なため安価ですが、使用する溶接棒が太いかつ比較的大電流のアーク放電で行うので薄板の溶接には向いていません。また、他の溶接方法と比べて技術が必要となります。

溶接棒を母材に叩きつけるようにして、アークを発生させて溶接を始めるのですが、初心者にはそれがなかなか難しいです。さらに、アーク長を一定に保つために、消耗していく溶接棒に合わせて、適切な手の高さに調節しながら溶接していかなければなりません。そのため一定のリズムが必要になり、きれいに仕上げるにはある程度の慣れが必要になってきます。

ただ派手にアークを飛ばして、もくもくとヒューム(*3)を上げながら作業を行うことになるので、「The 溶接」といった作業風景でかっこよく、私は好きな溶接方法です。

(*1)アーク
気体放電現象の一種。高温で強い光を発するのが特徴です。炭素やタングステンなどの電極を接触させて、電流を流している状態で電極を引き離すと電極間にアークが発生します。身近なアークとしては、コンセントから通電中のプラグを引き抜いたときに発生するスパークが挙げられます。

(*2)シールドガス
高温となった金属が、酸素と反応して酸化してしまうことを防ぐために発生させるガスのこと。

(*3)ヒューム
溶接作業時に見える、煙のようなもののこと。金属蒸気が凝集したもので、吸引してしまうとじん肺をはじめとした健康被害をもたらします。溶接時には、防塵マスクの着用と集塵機の稼働が欠かせません。

②『マグ(MAG)溶接』・『ミグ(MIG)溶接』

“半自動溶接”の一種です。大気中からの酸素や窒素の侵入を防ぐ目的で、シールドガスを溶接部に流します。そのシールドガス中で、溶接ワイヤを連続的に送り出しながらアーク溶接を行います。シールドガスに炭素ガスや、炭酸ガスとアルゴンを配合して用いる溶接が“マグ溶接”です。そして、シールドガスにアルゴンのみや、アルゴンと酸素の混合ガスを用いる溶接が“ミグ溶接”です。

溶接ワイヤを連続的に送り出しながらアーク溶接を行うので、溶接速度が速いです。またシールドガスによって、大気と遮断された状態で溶接作業が行われるので、空気中の酸素の影響を受けることなく溶接が進行します。それによって熱の発生が局部に止まるため、ひずみの発生が少なく、薄板の溶接に適していると言えます。溶接ワイヤが、溶接機本体から自動でトーチの先まで出てくるので、先ほど紹介した被覆アーク溶接と違って溶接棒を交換する必要がありません。

作業能率が良い上に、ヒュームやスパッタ(*4)が少なく、ビード(*5)外観が良好で仕上がりが美しいというメリットがあるため、DIYでの溶接方法として選ばれることも多いようです。ただし、風のある環境ではシールドガスが吹き飛ばされてしまうため、屋外での作業には適していません。ちなみに、学生フォーミュラチームの中ではこの溶接方法を採用しているチームも多数あります。

次々と自動で送り出されてくる溶接ワイヤに合わせて手を進めていかないといけないので、ペースをつかむまではなかなか難しいかもしれません。ただ、後述するティグ溶接と違って使うのは片手のみで良く、被覆アーク溶接よりもトーチは軽いので作業が楽に進められます。

(*4)スパッタ
溶接後の母材に付着している黒っぽい金属の粒のこと。見た目が悪い上に、塗装欠陥の原因にもなるため溶接後にはブラシなどで取り除きます。

(*5)ビード
溶接した接合部分のこと。溶接棒あるいはワイヤと母材が溶けて融着することで、うろこ状になっている部分です。

③『ティグ(TIG)溶接』

アルゴンなどの不活性ガス中でタングステン電極と母材の間にアークを発生させ、このアークで母材や溶加材を溶かして溶接するのが、“ティグ(TIG)溶接”です。ステンレスや非鉄金属(アルミニウムなど)など、あらゆる金属の溶接に適用できるのが特徴です。

電極に用いられるタングステンの融点は金属の中で最も高く、長時間にわたる作業でも高温に耐え続けることができます。そのため電極がほとんど溶融しないので、被覆アーク溶接のように電極が消耗する場合に比べてアーク長を一定に保ちやすいです。

また、広範囲の電流値において安定してアークを出すことができることから、母材に入れる熱の調節が容易にでき、薄板や複雑な形状、精密さが要求される溶接を行うことに向いています。安定性があって溶融池(*6)が見やすいので、比較的作業がしやすくなっています。

以上のような特徴から、弊チームではティグ溶接でフレームやエキゾーストマニホールド(排気管)などの溶接部品を製作しています。

シールドガスとして使われる不活性ガスには、アルゴンガスが最も採用されています。また溶接機には、“直流溶接機”と“交流溶接機”の2種類があります。もちろん、直流と交流の両方に対応した溶接機もあります。交流溶接機は、アルミニウムの溶接を行う際に用いられます。

右手には電極棒、左手には溶加棒と、両手を同時に使って溶接していくのが特徴です。同じペースで両手を動かしながら、溶け具合に合わせて溶融池に溶加棒を足していかなければいけないのが難しいポイントです。きれいなビードで仕上げるには、溶融池の様子を見ながらリズム良く溶接を進めていくことが必要になります。自分のペースに合わせて細かい調整をしながら溶接することができるので、薄板や精度の必要な部分の溶接にはとても向います。

(*6)溶融池
溶接の際に、アークなどの熱によって電極や母材が溶けてできた溶融金属の溜まっている部分のこと。実際に、池のように丸くなってたまっている様子が見られます。

ここまで紹介した3種類の溶接方法は、電気を使って発生させたアークの熱を用いて金属を溶かしていました。他にもガスバーナーの炎によって溶接を行う“ガス溶接”や“プラズマ溶接”、“テルミット溶接”など、まだまだ様々な種類があります。

〇『YNFPの溶接部品』

ここからは弊チームで製作している溶接部品を難易度別にご紹介します。

・Lv.1『スリーブとパイプ』

サスペンション部品である、アームやロッド類のパイプとスリーブ部分の溶接です。仮止めをした後に、接合部分をぐるっと一周するだけという簡単な溶接なので、初めて溶接を行う部員もこの製作から行います。うっかりと、溶接したばかりのパイプを持って“やけど”を、しないように注意が必要です。

仮止めして、周囲を溶接する
<仮止めして、周囲を溶接する>

・Lv.2『アーム』

“Lv1:スリーブとパイプ”を溶接した後は、ロッドエンドを付けるための穴あけとねじ切りを旋盤で行います。その次に、スフェリカルベアリングケースも併せてアーム本体の溶接です。溶接自体の難易度は、そこまで高くないのです。

しかし、溶接準備としてパイプの端面の形を整える作業である、すり合わせがなかなか難しいです。精度が悪い場合は、隙間の穴埋めが必要なため高難易度な溶接になります。ちなみにパイプの集合箇所は、上手くいくと“きれいなビード”が出るので、やりがいのある部分です。

アーム部の溶接。すり合わせが難しい。
<アーム部の溶接。すり合わせが難しい。>

・Lv.3『フレーム』

学生フォーミュラカー製作で一番大きな溶接部品、フレームです。弊チームでは、春休みの期間に2週間ほどで一気に完成まで作り上げます。

車台の骨格となる、フレームの溶接。
<車台の骨格となる、フレームの溶接。>

溶接内容自体は隅肉溶接の繰り返しで、板厚もそこまで薄くないため、“Lv.2:アーム”と難易度は変わりません。大きく違うポイントは“溶接姿勢”です。ある程度の形ができあがり始めるとフレーム内に入って溶接したり、仰向けの姿勢で溶接したりと、身体が固い人間には苦行の連続になります。しかも80本ほどのパイプを組み合わせていくため、単純に溶接箇所の数が多いというのも大変なところです。その分、完成したときに感じられる達成感は、とても大きなものになります。

(左)狭いフレーム内部の溶接作業(右)フレームの溶接作業の様子
<(左)狭いフレーム内部の溶接作業(右)フレームの溶接作業の様子>

・Lv.4『排気管』

ここから紹介していく2つの部品は、より“すり合わせ”の精度と、繊細な溶接技術が要求されてきます。排気管はフレームとの干渉回避で複雑な形状になりがちなため、パイプを組み上げていくのも一苦労です。4本から2本、最後には1本へと鋭角で合流していく部分の溶接が特に難しいポイントです。排気漏れを起こすわけにはいきませんので、穴を開けないよう慎重に溶接を進めていきます。

溶接して、4本の排気管を2本にする
<溶接して、4本の排気管を2本にする>

排気漏れしないように丁寧な溶接技術が要求される
<排気漏れしないように丁寧な溶接技術が要求される>

・Lv.5『燃料タンク』

YNFP溶接部品の最難関は“燃料タンク”です。そもそも鉄同士を溶接するのに比べて圧倒的に、アルミニウムを溶接する“ティグ溶接”は難しいです。まず、きちんと“溶融池”を作らないと、材料同士がくっつきません。加えて鉄に比べて熱が入りやすいので、溶け方に合わせて段々とトーチを動かすスピードを上げて調節していく必要があります。

“ティグ溶接”で作られたアルミニウム製ガソリンタンク
<“ティグ溶接”で作られたアルミニウム製ガソリンタンク>

また、塵が溶接部分に混じると黒っぽく小さな穴が開いて燃料漏れにつながります。そのため溶接を始める前には、酸化被膜を落とした後に脱脂も行います。鉄に比べて気を遣う部分が多くなりますが、うまくいったときにはツヤの出たうろこ状のビードが均一な間隔でつながっていき、とても見栄えが良いものに仕上がります。ドライバーの安全にも関わるので責任は重いものの、きれいに仕上げられたときは感動ものです。

燃料漏れしないように、キレイにビートを盛る
<燃料漏れしないように、キレイにビートを盛る>

〇『終わりに』

大学生になるまで、自分が溶接技術を身に着けることになるとは想像もしていなかった私です。しかし学生フォーミュラの活動を通して、このようなコラムを1本書けるくらいには知識と経験が身につきました。溶接は、練習すればするほど“仕上がりが美しく”なっていきます。また、自分の手で実際にモノを作っていく製作の“やりがい”が、とてもあります。興味を持たれた方は、DIYの一環として挑戦されてみてはいかがでしょうか?

お読みくださり、誠にありがとうございました。

以上

執筆:横浜国立大学フォーミュラプロジェクト(YNFP)

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